積小為大

理事の株式会社ユザワの湯澤です。今回は、(公社)栃木県経済同友会の優秀起業家賞を受賞した記念セミナー内容の抜粋をお伝えしたいと思います。

弊社は1989年に創業し、1991年に「㈱ユザワ」として旧今市市に本社を設立しました。

事業内容は、カーテン・絨毯・壁紙・床材等のインテリア商品の卸と工事の代理店業です。特に、カーテン等の窓廻り商品に特化している全国でも数少ない専門商社です。2016年には東京営業所を開設し、現在、北は青森、南は九州の全国エリアを約30名で対応しています。

売上高は、2024年度は10億1,000万円、今年は15億円を更なる目標としています。取引先売上構成は、大型小売店が38%、大手ハウスメーカーが28%、一般内装工事店が19%、大手工事店が10%、その他が5%です。今後の取引拡大先として、特に売上構成の5%部分のチャンネルが未開発分野のため営業開発に力を入れたいと考えています。具体的には、販売チャンネルの複線化と多様性ということで、法人、直需、設計、リフォーム、民泊事業等の成長市場への推進と取扱商品の拡大を予定しています。

本日の演題「積小為大」ですが、「毎日の小さな努力の積み重ねが大きな成果につながる」という意味です。二宮尊徳翁の訓えの一つで、私の座右の銘でもあります。尊徳翁の訓えには、豊かな人生を送るための知恵と術が示されていて、「積小為大」や「分度推壌」等があります。私はこの精神で、「お客様のため」「従業員のため」「地域のため」に小さなことを積み重ねていきたいと考えています。最近、ビジネス誌や書籍等で尊徳翁がよく取り上げられていますが、尊徳翁の訓えは、渋沢栄一氏やトヨタ自動車等、多くの経営者に影響を与えたとされます。尊徳翁の訓えを経営戦略の柱としているのが、寒天で有名な伊那食品工業㈱で、社員の幸せを追求する「年輪経営」を実践されています。また、尊徳翁の思想ですが、SDGsの考え方そのものであることを研究者が指摘しているようです。

私は農家の長男のため、父親の方針により、高校卒業後は農業に携わっていました。それが何故インテリアの世界に携わっているかというと、23歳の時に、文部省・総理府選抜青少年海外派遣の一員として、アメリカに行ったことがきっかけです。この時に知り合ったアメリカの青年達から、これからは、「コンピュータ」、「農業」、「インテリア」の時代だと聞かされました。そして、ホームステイ先の家庭が備えていた、合理的でスッキリとしたインテリアが、私の心に響くものがあったのです。この時の経験や体験が人生の転機になり、「日本の住宅を素敵なインテリアにしたい」と一念発起することにしたのです。起業するために、しっかり勉強をしようと決意して、1976年に佐野音産業㈱に入社しました。農業の経験しかない自分を雇ってくれた社長に恩返しをしたいという思いと、負けず嫌いの性格から、「新規開拓の神様」と言われるまでになり、トップセールスマンとして恩返しができたと思っています。その後、1989年に、日光の自宅の8畳間で、湯沢インテリアを創業しました。サラリーマン時代に身につけた、新規開拓力、営業力、人脈作りの強みを活かして、山奥の不便なところにあるという弱みを乗り越えました。創業するにあたっては、インテリアファブリック商社、「窓廻り専業」に特化するとともに、顧客のニーズを聞き、トータルでインテリアを提案できる、提案型営業スタイルを取り込み、独自性を追求して、他社との差別化を図りました。顧客に良い提案をできるよう、町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー宇都宮校に通って勉強をしながら、全国で4番目となる「栃木インテリアコーディネーター協会」を設立し、初代会長として栃木県内のインテリアの普及に努めました。3足の草鞋を履いての生活は、寝る間もないほど忙しかったのですが、今思えば、この時の苦労が弊社の礎になったと感じています。その甲斐があり、創業15年目ぐらいには、安定した経営体制となりました。そんな時、お客様から「インテリアはセンス」という言葉をいただいたのです。センスは磨けば磨くほど良くなることから、自分のセンスを磨くべく、55歳で「世界のインテリアを見て歩き」を開始しました。この時、アメリカに留学した時のことを思い出し、「初心忘るべからず」、「百聞は一見にしかず」だと感じました。

地域社会への貢献を少しだけご紹介させていただきます。1989年に、栃木インテリアコーディネーター協会を設立しました。日光には、日本のインテリアの萌芽ともいえる建築物がたくさん存在することから、全国のインテリアコーディネーター協会の会員の方々に、日光金谷ホテルをはじめとした、日光の建築やインテリアの素晴らしさを又『日光インテリア大使』としてPRしています。2003年には、フリーデンホッケー倶楽部を設立しました。日光市は昔からホッケーが盛んな地域で、多くのスポーツ少年団が結成されています。私共のクラブは、全国優勝を3回、準優勝も数回しており、チームからオリンピック選手として活躍する選手が育つことを夢見て活動しています。2021年には、足利市最勝寺文化財修復委員会を設立しました。同年発生した足利市山林火災の延焼による焼失を危惧し、栃木県指定文化財「御本尊毘沙門天像」をはじめ、仏具などを避難させましたが、経年劣化による損傷が激しいことから、クラウドファンディングを行い、修復を目指しています。未来へ歴史を伝えていくためにも、ぜひご協力をお願いいたします。

最後になりますが、今、日本は混迷の時代となり、少子高齢化・人口減少社会を迎えています。室内装飾業も、マーケットに対して市場を創出し、変化の時代に対応していかなければなりません。今後、新築住宅着工数が減少となり、リフォーム市場の拡大が予想されることから、生産性向上のために、デジタル化、SDGs、カーボンニュートラル等への取り組みと、本社新事務所移転計画・働き方改革等を進めたいと思います。営業的には、成長市場を押さえシェアー拡大を加速し、販売チャンネルの複線化、M&Aへも挑戦したいと思っています。伊那食品㈱の塚越会長の社員を幸せにする年輪経営。当社も木のように着実に成長し続け、永続企業になりたいと考えています。そして、「積小為大精神100年長寿企業」をスローガンにし、日光から業界トップを目指したいと思います。


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