「the WARP」の開発

監事の小川です。カーテン用の新しいテキスタイルを生み出したい──その思いから始まった “the WARP” の開発。私が挑んだのは、伝統技法「ほぐし織」のにじみや揺らぎを、現代的なデジタル技術とジャガード織で再解釈することでした。特に、経糸にデジタルプリントを施し、緯糸にジャガードで陰影を重ねるこの手法は、織物の持つ立体感とプリントの色彩を同時に表現できる、新たなアプローチでした。

しかし実際の開発は簡単ではありません。150cm幅で10000本もの経糸を整列させて転写プリントする作業は、わずかな重なりや張力の差が白場やズレとなって現れ、最初の試作では満足のいく表情が得られませんでした。そこで経糸の均一性を高めるためにテンション調整を見直し、さらにスプレッダー導入の検討により糸の広がりを安定化。何度もプリント条件を調整し、ジャガードの織組織との相性も細かく検証していきました。

最も難しいのは「どう組み合わせれば美しいのか」というデザインのバランスです。プリントが主張しすぎると織りの立体感が消えてしまい、織りを強く出すとプリントが沈んでしまう。両者の魅力をどの距離感で重ねれば、光の中で自然に調和するのか。

まだ「完成した」と言える段階ではありません。それでも、試作の中で一瞬だけ見える“影が動くような表情”に、この技法が持つ可能性を感じています。プリントと織りがぶつかるのではなく寄り添う瞬間──その美しさをかたちにしたい。その思いで、開発を続けています。

the WARP は、完成された製品ではなく、いままさに進化し続けているプロジェクトです。理想の表情を求めて、これからも挑戦を続けていきます。


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